ホスピタリティ産業の動画×SNS集客法:ショート動画で認知から予約・リピートまでつなぐ実践ガイド

旅行先をSNSで探し、動画を見て宿泊施設を選ぶ行動が広がるなか、ホスピタリティ産業における動画とSNSを活用した集客法の重要性が増しています。もしこの領域への対応が遅れれば、旅行者の検討段階で候補にすら入れないリスクが生じます。

対策として必要なことは、SNSごとの特性を踏まえた動画活用と、認知から予約・リピートまでの導線を一貫して設計することです。本記事では、背景となるデータや具体的な事例をもとに、実務で使える手順と注意点を順に解説します。




動画・SNS集客が重要になった背景


旅行者行動の変化と個人手配の増加

旅行先の情報収集は、旅行代理店のパンフレットや口コミサイト中心から、SNSへ移りつつあります。Instagramなどでハッシュタグ検索を行い、写真や動画から旅行先を決める人が増えています(参照*1)。

写真や動画で視覚的に情報収集できるInstagramは、ホテルや旅館といった宿泊施設を探す際にも頻繁に使われています。そのため、集客法の一環としてInstagramのアカウント運用を始める宿泊施設が増えている状況です(参照*2)。

こうした変化を踏まえると、旅行者が個人でSNSを使って情報を集め、手配まで完結させる流れへの対応は避けて通れません。自施設のターゲット層がどのSNSで情報を探しているかを確認し、動画での発信体制を整えることが出発点になります。


観光DXの潮流とデータ活用の前提

観光分野のDX推進では、予約・決済の利便性向上やデータ活用が前提になりつつあります。観光庁は、旅行者の利便性向上や周遊促進、観光産業の生産性向上を目的として、観光分野のDX推進を掲げています。さらに、旅マエ・旅ナカ・旅アトの予約・移動・宿泊・購買データを用いてマーケティングや経営戦略を策定する取組を推進しています(参照*3)。

観光DX推進による地域活性化モデル実証事業では、データを活用し地域全体の消費拡大を図る「地域活性化の好循環モデル」、生成AIの技術活用による業務効率化を図る「生成AI活用モデル」、オープンデータ化の推進を通じて経営高度化を図る「オープンデータ推進モデル」の3つのモデルの構築に取り組む実証が行われました(参照*4)。

動画やSNSを使った集客法も、こうしたデータ活用の流れの一部に位置づけられます。SNS経由の行動データをマーケティングにどう組み込むかを整理したうえで、施策を設計することが求められます。



動画・SNS集客の全体像


認知から予約までの導線設計

SNSを活用した集客法では、「旅前・旅中・旅後」の体験を一貫してデザインする動きが広がっています。観光地や自治体、ホテル・旅館がそれぞれのフェーズに合わせたコンテンツを発信し、旅行者との接点を途切れさせない設計が求められます(参照*1)。

実際の導線づくりとして、投稿のキャプション部分に「ご予約・詳細はプロフィールのリンクからお願いします」と記載し、宿に興味を持ったユーザーに対して次のアクションを喚起する方法があります。こうした導線の明示が、動画やSNSでの認知を予約へつなげるポイントになります(参照*2)。

各投稿に「見た人が次に何をすればよいか」を1つだけ示す設計を徹底し、認知から予約までの流れに抜けがないかを確認します。


目的別に見るKPI設計

動画やSNSの集客法を戦略的に運用するには、KGI(最終的に達成したい成果)とKPI(そこへ到達するための中間目標)を明確に分けることが欠かせません。この2つを定義することで、SNS運用を感覚的な活動ではなく、改善可能な施策として継続できます(参照*5)。

KPIの例としては、SNS経由の訪問数、フォロワー増加数、エンゲージメント率(投稿に対する反応の割合)などが挙げられます。投稿内容・媒体・タイミングをデータに基づいて改善することが、持続的な成果につながるとされています(参照*1)。

自施設の最終目標が「宿泊予約数の増加」なのか「新規認知の拡大」なのかを先に決め、そこから逆算してKPIを設定する手順で進めます。



主要SNS別の集客法


Instagramのショート動画活用

Instagramは、写真映えを重視した観光地・宿泊施設の魅力発信に適しています。ストーリーズやリールで「旅行前の期待感」を演出できることが特徴です(参照*1)。

リール投稿は、まだアカウントをフォローしていないユーザーの発見タブに掲載されることが期待でき、新規ユーザーへのアプローチとして有効な投稿形態です。特徴的な立地を活かしたエンタメ性の高い内容にすると、アルゴリズムからの評価も高まる投稿になります(参照*2)。

TikTokやInstagramなど動画での露出が急速に拡大するなか、最初の5秒が印象を大きく左右します。SNS向けの動画は15~60秒を目安に、冒頭で引きつける構成を意識して制作します(参照*6)。


TikTokとYouTubeショートの使い分け

TikTokは、Z世代へのアプローチに有効なプラットフォームです。テンポの良いショート動画で「体験のワクワク感」を伝えることに向いています。一方、YouTubeは地域の文化や歴史、体験をじっくり伝えるのに適した長尺動画のプラットフォームとして位置づけられています(参照*1)。

フル動画(2~3分)とSNS動画(15~60秒)では、視聴者の集中力や利用場面が異なります。この目安時間を踏まえ、同じ素材からフル版とショート版をそれぞれ編集して展開するのが実務上の基本です(参照*6)。

「認知拡大はTikTokのショート動画」「理解促進はYouTubeの長尺」と目的別に使い分け、同一素材を効率よく複数の媒体に展開する運用フローを組み立てます。


LINE公式アカウントで予約・リピート増

LINE公式アカウント配信は、友だち登録したユーザーに対してクーポンやキャンペーン情報、セール案内などをプッシュ通知で届けられる手法です。高い開封率が特徴で、店舗集客やセール告知、会員限定キャンペーンなどリアルタイム性の高い施策に向いています(参照*5)。

飲食チェーンの事例では、「LINEで予約」のトライアル期間中に、既存の媒体Aや媒体Bの予約数が前月と近い水準を維持したまま、LINE経由で35件の予約が純増しました。4月対比では媒体全体の予約数を130%に引き上げる要因となっています。LINE自体が月間8,900万人(2021年6月時点)という利用者数を持ち、友だち登録の操作もスムーズなため、来店時に別のアプリをダウンロードしてもらう必要がないことも強みです(参照*7)。

動画やSNSで獲得した新規の認知をLINEへ誘導し、プッシュ通知で予約やリピート来訪につなげるという流れで、集客法全体の導線を完成させます。



実践手順と運用設計


企画と撮影の基本

動画の企画段階では、テーマの選定が仕上がりを大きく左右します。プロモーション動画のテーマは大きく3つに分かれます。コンセプトや世界観を伝える「イメージ型」、ターゲットや施設の特徴を細部まで紹介する「説明型」、施設での過ごし方をリアルに伝える「ストーリー型」です。さらに、モデルを起用するかしないかによっても印象が変わります(参照*6)。

撮影時には、SNS向けの短尺版とフル動画の両方を意識して素材を撮りためておくことが効率的です。冒頭5秒で視聴者をつかむカットを確保しておくと、編集段階での選択肢が広がります。自施設の強みがどのテーマ型に合致するかを洗い出し、撮影リストに落とし込むところから着手します。


投稿設計と改善の回し方

Instagramのアカウントを成長させて影響力を高めるには、アルゴリズムを理解した運用が必要です。エンゲージメント率が高い投稿を作成すること、リール投稿ではエンタメ性を意識すること、不確かな情報を発信しないことなどの工夫で、フォロワー外のユーザーに表示されやすくなります(参照*2)。

KPIとしてSNS経由の訪問数やフォロワー増加、エンゲージメント率を設定し、定期的な振り返りを行うことで成果を可視化できます。投稿内容・媒体・タイミングをデータに基づいて改善していくことが、持続的な運用につながります(参照*1)。

週次または月次で数値を確認し、伸びた投稿の共通点と落ち込んだ投稿の原因を分類する作業を繰り返します。



比較と選び方


自社運用と外注の判断基準

動画やSNSの集客法を始める際、自社で運用するか外部に任せるかは最初に判断すべきポイントです。自社にアカウント運用の人的リソースや経験がない場合は、専門サービスを活用してアカウント運用を外注する選択肢もあります(参照*2)。

外注の利点は、撮影・編集・投稿分析まで一括で任せられるため、社内の工数を抑えつつ質の高い運用を維持できる点にあります。一方で、施設のリアルな雰囲気やスタッフの人柄を伝える投稿は、現場にいる社員のほうが素材を集めやすいという側面もあります。

自社の人員体制と予算、求める投稿頻度を並べて比較し、どの工程を内製し、どの工程を外注するかを切り分ける作業から始めます。


広告運用とインフルエンサーの使いどころ

インフルエンサーマーケティングは、フォロワーとの信頼関係を活かし、広告色を抑えた自然な発信ができる手法です。とくに若年層や特定のコミュニティへの訴求に効果的とされています。地域と親和性のあるインフルエンサーを起用することで、ターゲット層への自然な到達が可能になり、体験型の発信が来訪意欲を高める手段として機能します(参照*1)。

一方、消費者庁の「ステルスマーケティング規制」により、インフルエンサーマーケティングでは「#PR」「#広告」などの表記を基本的に明示することとされています(参照*5)。

広告配信とインフルエンサー起用のどちらを優先するかは、目的が「短期の認知拡大」か「信頼醸成による予約獲得」かで分かれます。予算配分と目的を照らし合わせ、両者の配分を決めていきます。



事例とデータで見る成果の出し方


観光庁の優良事例に学ぶデジタル活用

観光庁は、DMO・自治体・観光事業者など地域の観光DX推進を担う方々に向けて、「観光分野のDX推進に向けた優良事例集 ~地域一体で進める観光DX~」を作成しました。DX活用の方向性や国内外の優良事例、短期的に取り組みやすい施策などが掲載されています(参照*8)。

観光庁はまた、「地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化事業」の一環として、国内外の人々に旅館の魅力を広く伝えるためのプロモーション動画を作成しました。日本各地には多様な歴史的・文化的背景を持つ旅館が存在し、貴重な建築や調度品、美しい庭園を有する旅館のほか、全国各地に地域固有の泉質を持つ温泉旅館があることを発信しています(参照*9)。

行政が公開する優良事例集やプロモーション動画は、自施設の集客法を見直す際のベンチマークとして活用できます。自社の取組と照らし合わせ、取り入れられる施策を洗い出す作業に役立てられます。


宿泊施設の公式事例に学ぶ動画施策

星野リゾートは、2020年4月21日に公式Instagramで星野源さんの「#うちで踊ろう」とのコラボレーション動画を公開しました。動画では、界 日光の「日光下駄談義」や界 加賀の「加賀獅子舞」、青森屋の「みちのく祭りや」など、全国各地の施設で楽しめるご当地の踊りや体験をまとめ、自宅にいながら旅の気分を味わえる内容に仕上げています(参照*10)。

ターゲットを明確にすることでSNSでの訴求力が高まり、プロモーションの相乗効果が期待できます。フル動画をショートに編集し、SNSでの広告にも活用する展開方法も実践されています(参照*6)。

こうした事例に共通するのは、施設の独自性をショート動画で凝縮して伝え、フル動画やSNS広告へ横展開している点です。その施設でしかできない体験が何かを洗い出し、ショート動画へと落とし込みましょう。



失敗例と注意点


よくある失敗パターン

動画やSNSの集客法でありがちな失敗の1つが、更新が途中で止まってしまうことです。アカウント運用専門の人員を確保する、あるいはチームで運営するなど、更新が滞らない工夫をしてからInstagramの運用を始める必要があります(参照*2)。

もう1つの典型的な失敗は、KPIを設定しないまま運用を開始し、効果検証ができないケースです。投稿の目的が曖昧なまま発信を続けると、改善のヒントが得られず、社内で「成果が見えない」という評価につながりかねません。

運用体制とKPIの両方を先に固め、そのうえで投稿を開始するという順番を守ることが、失敗を防ぐ基本的な手順になります。


権利・炎上・なりすまし対策

誤った情報の発信や不適切な表現が拡散されると、信頼の失墜や炎上に直結します。とくに自治体や公的機関の場合、コメント欄での批判や誤解が大きなトラブルに発展する可能性もあります。こうしたリスクを防ぐには、投稿前チェック体制の徹底とコメント対応ルールの明確化が必要です(参照*1)。

なりすましのリスクも見過ごせません。帝国ホテルは、Instagram公式アカウントになりすました偽アカウントが確認されたと注意喚起を行っています。ダイレクトメッセージに記載されたURLの開封、返信、情報の入力は行わないよう呼びかけました(参照*11)。

自施設の公式アカウントであることを利用者が容易に識別できるよう、プロフィール欄に公式サイトへのリンクを設置し、定期的になりすましアカウントの有無を確認する運用を組み込みます。



おわりに


ホスピタリティ産業における動画とSNSの集客法は、旅行者の行動変化に合わせてプラットフォームを選び、認知から予約・リピートまでの導線を一貫して設計することがポイントです。KPIの設定、投稿の改善サイクル、権利やなりすましへの備えといった運用面の体制づくりも欠かせません。

本記事で紹介した背景データや事例、実践手順を参考に、自施設の強みに合ったSNSとコンテンツ形式を選定し、小さな規模からでも動画発信を開始できます。



▼参照
(*1) SNSCHOOL – 【2026年最新】観光SNS成功事例|インスタからXまで全媒体解説 | SNSCHOOL
(*2) インスタラボ|インスタグラム・インフルエンサーマーケティング専門メディア【Find Model】 – 【成功事例】ホテル・旅館のインスタグラム集客の運用ポイント|人気アカウントも紹介
(*3) 観光庁 – 観光DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進 | 持続可能な観光地域づくり戦略 | 観光政策・制度 | 観光庁
(*4) プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES – 観光庁「観光DX」成果報告会”Next Tourism Summit 2026” -地域一体で進める観光DX- を開催のお知らせ | NTTドコモビジネス株式会社のプレスリリース
(*5) ホームページ制作会社NTTタウンページ | デジタルリード – Web集客で実績を上げる方法|成功事例10選と25の業種別戦略
(*6) 動画制作・スチール写真撮影のアビリブプロモーション|美しい動画のプロモーションサービス – プロが選ぶ!ホテル・旅館のプロモーション動画まとめ30選【2025年版】|アビリブプロモーション
(*7) LINEヤフー for Business – LINE公式アカウントで予約受付が完了!居酒屋業態で見えた「LINEで予約」活用の成果とは?|LINEヤフー for Business
(*8) 観光庁 – 「観光分野のDX推進に向けた優良事例集 ~地域一体で進める観光DX~」を作成いたしました | 2024年 | トピックス | 観光庁
(*9) 観光庁 – 旅館の魅力を伝えるプロモーション動画 | 2025年 | トピックス | 観光庁
(*10) hoshinoresorts.com – 【星野リゾート】星野源さん×星野リゾート勝手にコラボレーション 「#うちで踊ろう」動画を公開しました | 企業ニュース | 星野リゾート【公式】
(*11) 帝国ホテル – インスタグラム帝国ホテル公式アカウントのなりすましに対する注意喚起 | お知らせ | 帝国ホテル 大阪



展示会に関する情報

ホスピタリティテック EXPO
主催: RX Japan 合同会社
最新情報は、WEBをご確認ください。
https://www.hospitality-show.jp/tokyo/ja-jp.html


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